文通を終わらせてしまう質問があります。しかも、いちばん礼儀正しいタイプの質問です。ご趣味は? お仕事は? ご出身はどちらですか? どれも相手が、履歴書やらプロフィール欄やらで、もうさんざん答えてきた質問です。聞かれれば、また律儀に答えてくれるでしょう。アンケートの回答みたいな手紙で。そのあとは、ふたりとも何を書けばいいのか、わからなくなります。
手紙が返ってくる質問は、そこが違います。小さくて、具体的で、ちょっとずるい。相手がこれまで一度も言葉にする必要のなかったことを、聞くからです。コツは、ほんとうにそれだけ。いつもの答えで済む質問には、いつもの答えが返ってくる。考えないと答えられない質問には、その人自身が返ってきます。
ここでは、そんな質問を66個、ふたりの距離感ごとに並べました。ただし、リストのまま送らないこと。送るのは、ひとつだけ。
まずはこれだけ。質問は一通にひとつ
質問は、手紙のいちばん最後に。ほかの文章の下に、ひとつだけ置きます。ひとつです。4つ聞けば、相手はいちばん答えやすいものにだけ答えて、残りの3つにはなんとなく後ろめたさを抱えたまま。ひとつなら、ちゃんと向き合って答えてくれます。その答えが、そのままこちらの次の手紙の種になります。
ちなみに、Kindredlyの手紙もこの形でできています。手紙の下に、別の行で質問をひとつ添えられる。だから読んだ人は、どこから返事を書けばいいのか、すぐにわかります。小さなしくみです。でも、返信率はこれでがらりと変わります。
はじめの一通に(まだお互い何も知らない)
知らない人に聞いても失礼じゃない。なのに「別に」のひとことでは返せない。そんな質問です。
- いちばん最近、自分の手で直したものは?
- 今朝、家の前の通りはどんなにおいがした?
- 誰にも言わずに、こっそり買っている小さなものは?
- ほんとうは何時に寝てる? で、何時に寝てることにしてる?
- 家でいちばん出番の多いマグカップは? どうしてそれなの?
- 妙に得意だけど、一度も役に立ったためしがないことは?
- いちばん最近、ひとりの部屋で笑っちゃったのは何?
- どこで聞いても「あ、うちの音だ」とわかる、子どものころの家の音は?
- 誰も見ていないとき、何を食べてる?
- ほかの言語にはなさそうな、母語ならではの言葉は?
- 9歳のころ、何になりたかった? その夢は、どうなった?
- いま座っている場所から、何が見える? 映える景色じゃなくて、ほんとうに見えているものを。
2通目、3通目に(相手の輪郭が見えてきた)
- おばあちゃんの話、してたよね。おばあちゃんの台所って、どんな感じだった?
- 頭の中で、ずっと自分と言い合いしていることは?
- もうすぐ、やめる決心がつきそうなことは?
- いちばん得意なことを教えてくれたのは誰? その人は、教えているつもりだった?
- しんどい日は、どうやって過ごしてる? よく聞くアドバイスじゃなくて、ほんとうにしていることを。
- 行ったこともないのに、もう懐かしい場所は?
- 20歳のころに信じていて、いま思うと恥ずかしいことは?
- 何年も前にもらったのに、いまでもふと思い出すほめ言葉は?
- いま先延ばしにしていることは? そうやって後回しにして、何から自分を守ってる?
- 誰にもほめられたことはないけど、ひそかに誇りに思っていることは?
- わたしが午後だけそっちの街に行くとしたら、ぜったい連れていかない場所は?
- 今週、誰かに送りかけて、やめたLINEは?
うまくいきはじめたら(相手の手紙が待ち遠しい)
- いちばん最近、考えが変わったことは?
- 初対面の5分で、よく誤解されることは?
- 最後に泣いたのはいつ? それは、いい涙だった?
- 誰にもぜったいバレないとしたら、やってみたいことは? もちろん、害のないやつで。
- 怒っているとき、字はどんなふうになる?
- 会いたいと思っちゃいけないのに、会いたい人はいる?
- 家族がよくする自分の話で、じつはちょっと事実と違うものは?
- 16歳の自分なら、いまの自分の何を許してくれない?
- 口に出したことはないけど、書いたことならある言葉は?
- 緊張すると、手はどうしてる?
- 一日を台無しにした、いちばん小さなできごとは?
- 一日を救ってくれた、いちばん小さなできごとは?
ずるい質問(聞くならそっと。それも、相手から答えにくいことを聞かれたあとで)
- 平気なふりをしていることは?
- わたしに、いちばん聞かれたくない質問は?
- 受け継いだもので、できれば受け継ぎたくなかったものは?
- 最後に誰かに、本音をまるごと話したのはいつ? 話して、よかった?
- このままだと、どんな人になってしまいそうで怖い?
- 10年後の自分に手紙を書くとしたら、一行で何て書く?
書くことについての質問(文通好きの大好物)
- 手紙は一気に書く派? 何日かかけて書く派?
- もらった手紙は、どうしてる? 箱、引き出し、それともスマホのフォルダ?
- 書いたのに出さなかった手紙はある? ざっくり、どんな内容だった?
- 話す言葉と書く言葉、信じられるのはどっち?
- 誰かが書いてくれた一文で、いまも大事にとってあるものは?
- 出す前に、自分の手紙を読み返す? それとも、恥ずかしすぎて無理?
軽めの質問(疲れた週に)
- 最近の帰り道ソングは?
- いま冷蔵庫の中で、いちばんテンションが上がるものは?
- パンについての持論は?
- 家でいちばんの「いい椅子」はどれ?
- 最近、夜中の2時に検索したものは?
- 5回じゃきかないくらい観た映画は? 毎回待ちかまえてしまうシーンは?
- 瓶に詰めてとっておきたい、においは?
- 猫派? 犬派? それとも第三勢力?
- 今日の自分の天気は? ただし、天気の話はなしで、一文で。
- 画面を撮ったもの以外で、最後に撮った写真は?
- わたしがアポなしで遊びに行ったら、何を作ってくれる?
- なぜかいつも、家にありすぎるものは?
5通目に(この文通が友情になるか、決めるとき)
Kindredlyでは、お互いに5通ずつやりとりしたところで、ふたりは名前を交わすかどうかを選べるようになります。どこで文通していても、こういう瞬間はあるものです。やりとりが何かに変わっていくか、何にもならないまま静かに終わるか。そのときのための質問です。
- 最初の手紙で、わたしのことをどんな人だと思ってた? 外れていたのはどこ?
- この文通、この先どうなったらいいなと思う?
- 毎日顔を合わせる人には言っていないのに、わたしには話したことは?
- 名前が書いてなくても、わたしの手紙だってわかる? どうやって?
- わたしが書いたことで、あとから思い返したことは?
- 明日で文通が終わるとしたら、最後の手紙には何て書いてあってほしい?
聞かないほうがいい質問
失礼だからではなく、そこで話が終わってしまうから。
- 「あなたのこと、教えて」これは質問ではありません。アンケートの記入欄です。
- 「どんな見た目?」文通相手を探しがいのある場所なら、誰もこの質問に答えなくていい。手紙の書きがいがある相手なら、答えません。
- 「続きはLINEでしない?」それが相手に届く、最後の手紙になります。ほぼ間違いなく。
- 「どうして返事くれないの?」手紙は遅いもの。その遅さこそが、手紙のいいところです。催促するかわりに、もう一通書いてみて。
- 正解がある質問は、ぜんぶ。クイズは、文通ではありません。
最後に、聞き方について
いい質問は、小さなカードを添えた贈り物です。カードに書いてあるのは、ちゃんと読んでたよのひとこと。ここに並べた質問が効くのは、相手が書いてくれたことから、自然につながるときだけ。おばあちゃんが一度も出てこない手紙に、13番は使えません。手紙は二度読むこと。相手がさらっと流しかけた一文を見つけて、そこを聞いてみてください。
見知らぬ誰かに、こんな質問をされてみたくなったら。今日の机には、15通の手紙が届いています。その多くが、最後に質問をひとつ添えています。登録しなくても読めます。